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<子天狗玄太> 雨ニモ負ケズの本当の作者はだれ?  10:07
水晶クラスター
<子天狗玄太>
「あれって本物なのか?」賢治が帰ったあとで玄太に訊いた。
「うん」と彼は額に皺寄せてうなずいた。「ごめん、おいらが連れてきたみたいだ」
「えっ?」「獣道に獣の臭いが残るみたいに、天狗の通路には天狗の匂いが残る。
チョウチョが飛んだあとに残していく鱗粉みたいだとも言うんだよ。
天狗はそれを読んでどの部族がいつごろそこを通ったかを知るんだけれど、
たまにその匂いに人間の霊が引き寄せられてくる。
そのミヤザワケンジという人は、満月みたいに明るかった。
それにここに来たくて、きっかけを待っていたみたいだ。それでミヤザワケンジって有名人なの?」
「うん、とっても。100年くらい前の人だ。童話や少年向きのお話やちょっと難しい詩をたくさん残した。
彼の童話は子供たちの教科書にのっている。何種類もの絵本にもなっている。
彼は玄太やおれと同じように鉱物ファンでね。お話には鉱物の名前がいっぱい出てくる。
でもそれを理解できる人は少ない。少ないといえば賢治の思いを理解できる人はもっと少ない」
「へえ、すごいんだ」
「だけど、亡霊というのは死にきれずにいる連中だとばかり思っていた。
賢治の霊が迷ったままだなんて、信じられない」
「霊というのは亡霊だけじゃないんだよ。偉大な人とか有名な人は、みんなの心の奥の方で
その人の思い出がひとつにより合わさる。それが霊を生む下地になる。
霊は人間の思いによって育ち、やがて実在感のある霊になるんだ。
家族の誰かがなくなると、家族のみんながその人を恋しがるよね。
その思いが家族の心の奥の方で育って霊になる場合もある。
だから霊というのは迷っている人ばかりじゃない」
「そんな難しいことって、おとうに聞いたのか?」
「違うよ、お師匠に習ったんだ」玄太はてれ笑いした。
「人間たちは霊界についてごく一部を知っているだけだし、それも自分たちが見たいように脚色して、
そうだと思い込んでいるんだって」
「彼はまた来てくれるんだろうか?」「そだね。石に惹かれてまたくるよ」
「<雨ニモ負ケズ>はほんとうに彼が書いたかを訊いてみたい」ぼくはいった。6-19-1
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<子天狗玄太> 藍銅鉱を拝見したい、と宮沢賢治がいった  09:48
マグノリア
マグノリア
<子天狗玄太> 
「宮沢賢治? 亡霊なの?」ぼくが訊く、ゲンタが「うん」とうなずく。
「とにかく入ってもらおう」ぼくは電源を切ってある自動ドアを手動であけた。
「なかに入れてもらってもよろしいでしょうか?」彼は訊く。「ああ、どうぞ」ぼくはいう。
たしかに伝記の印象ほどではないが出っ歯だ。
宮沢賢治は無類の鉱物好き。彼の物語にはシロウトには見当もつかないような鉱物名がちりばめられている。
石ヤなんだから彼の詩集は読んでおかなくてはと『春と修羅』を開いた。
感銘は大きかった。結局文庫の宮沢賢治全集を全部読んだ。
「お持ちであるなら藍銅鉱を拝見したい」彼は言う。
「ランドウコウ?」ぼくは言い、「ああ、アズライトね、たくさんありますよ」
標本類がいれてある多段式のケースからアズライト、マラカイトを入れてある箱を引き出す。
両者は同じ成分、アズライトの硫化が進むと、緑色に発色してマラカイトになる。
「手にしてもよろしいですか?」「ええ、どうぞ」
鶏卵より一回り小さいアズライトを手に眼に近付けて見入る。
彼は突然に「ほっほっ、ほーっ」と叫んで、飛び上がり、空中で2回転した。
「いやいや、じ、じつに素晴らしい」彼は言った。
「霧が融けたのでした。太陽は磨きたての藍銅鉱のそらに液体のようにゆらめいてかかり、
融けのこりの霧はまぶしく蝋のように谷のあちこちに澱みます」と自作の詩をよんだ。
「<マグノリアの木>ですかね」ぼくはいう。
「ほっーほ、わたくしの作品をご存じですか」「ええ、有名です」
「そうですか、有名ですか」彼は嬉しそうに笑った。
 帰らなくてはならないのだと、彼はていねいに別れの挨拶をして、自動ドアの前に立った。
ドアは開かない。ぼくは手動でドアを開いた。彼はふかぶかとお辞儀して背中をむけた。
 4-19-3(マグノリアの花。木蓮と泰山木の違いがわからない)
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<子天狗玄太> 玄太と店にいると宮沢賢治がやってきた  10:00
エレスチャル
<子天狗玄太> 
子天狗玄太は鉱物少年だった。そんなところがうちを訪ねてくるようになった理由と思う。
訪ねてくるたびにというわけではないけれど、おりにふれて話題になりそうな鉱物標本を彼にみせた。
玄太は嬉嬉として見入り、天然自然の色彩が地下の暗闇で形づくられることを不思議がるのだった。
ときには鉱物の組成について話して聞かせることもあった。玄太の色彩や形に関する感覚は鋭く、
鉱物にかんして彼は教え甲斐のある生徒だった。
定休日を選んで彼を自分の店に連れていったこともある。
店にはふたりのスタッフがいて、通常は彼女たちが店を切り盛りし、
ぼくは週に1日か2日顔を出せばすむことにしてある。接客して利潤を追及するよりも、
山の家にいて木々を眺めていたほうがはるかに性にあっている。
店は吉祥寺の駅から井の頭通りを7、8分久我山方面に歩いて1本奥まった通りにある。
閑静な商店街の雑居ビルの1階、20畳ほどの広さ。
3方の壁をアンティーク風のブックシェルやショーケース、手作りの棚で囲って、
中央に大きめのテーブルがふたつある。そこに水晶クラスターやエレスチャル、ヒマラヤ水晶、
アメシストなどの水晶類、ガーネット、トルマリン、カルサイト、などなどが
カトマンズの露店市よろしく展示してあって、ブレスレット、ネックレス、ペンダントなど、
20〜30代の男女がちょっと気張れば買えそうなアクセサリー類が
ショーケースからあふれんばかりになっている。
鉱物好きの子供たちにとって興奮度はディズニーランドに勝る。
電車のなかの玄太は緊張していた。玄太の隣には着物姿の中年女性が座り、わずかだが香水が匂った。
それが彼を落ち着かなくさせているらしかった。
「おいら電車にのるのは初めてだ、こういうのって初めてだ」彼は小声でいった。
店に着くと彼のテンションはいっきょにあがり、「おお、ガーネットがこんなにいっぱい、
このトルマリンはとてもみごとな色合いだ、それにこの水晶ったら腹をくすぐってくる、などと、
賛嘆の声がやまない。そのうちゲンタは入り口をみて眼をすがめた。
「ねえ、ねえ、おじさん、ミヤザワケンジという人が店にはいってもいいかと訊いている」と言った。
「ミヤザワケンジ? まじで?」「そだよ、ほらっ」
自動ドアの向こうに黒いウールの重そうなコートを着て、大正時代風の黒い帽子をかぶった男が立っていた。
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続・意識は開きだされ畳み込まれて輪廻していく  11:32
五色玉
カルサイト
<物質世界の開き出し>つづき。 
神秘思想的にはふたつの世界がある。日常世界・物質世界・現象世界がこちら側。
精神世界風にいう真如の世界・究極の実在・精神宇宙が向こう側。此岸と彼岸はこの概念にやや近い。
霊界は話の都合で向こう側に属していたり、こちら側にあったりする。
こちら側は向こう側から開きだされてくる。こちら側は向こう側に畳みこまれていく。
古代の概念では、この世をあの世の映し鏡と見立てたり、
あるいは向こう側ではじまる気配がこちら側の現実となるというふうに想像してきた。
開き出しと畳み込みは物理学者のデビット・ボームが提案した概念の受け売りだが、
両者を比喩するのに都合がいい。
向こう側とこちら側の対比は、パワーという概念に興味をだく人々にとってはとても重要だ。
これを理解しておかないと迷子になる。精神世界の迷子は餓鬼草紙に描かれた餓鬼のようなもので、
迷っていることに気付かず、ひとつの橋の上で右往左往するだけの人生を送らなくてはならない。


<物質世界の開き出し>
こちら側の日常世界、世界はかくしかじかであると思い込んでいる観念の世界が崩壊、ないし終結すると、
世界は結束を解かれて、意味を失い形を失っていく。
「地・水・火・風・空」の5元素でいうなら、人間の側の意識(因縁にもとづく)が
5元素とからみあうことで、その人にとっての物質世界は実体化し、意味や価値をもつが、
意識が5元素から離れることで物質世界は崩壊して、向こう側へと畳みこまれていく。
この考え方は東洋の神秘主義者たちが「解脱」や「悟り」とよぶ神秘的体験が、
いかにして起きるか理論付ける基礎になった。
こちら側の出来事はこちら側に執着して暮らす人々にとってはハードでリアルな現実であっても、
神秘主義的観点からは、人間の側の思い込みによって形成された夢の劇場のようなもので、
こちら側の世界を畳み込むことに成功するなら、迷妄が解かれる、真如が忽然と明らかになる。
「悟り」が一気に開示されると、そういう按配だった。
ヨーガ的にはサーンキヤ思想が、大乗仏教では唯識が、この道筋のマップを作ってきた。
孫悟空を従えた玄奘三蔵はこの知識を求めてインドに度立った。
(花が蕾から開きだされるように世界は5元素から開きだされてくる)


<物質世界の開き出し> 
現実世界は自分の思い込みによって、かくあるように存在を整えているという考え方は
科学的思考にマッチしない。西欧起源の合理主義の世界観では、
個人の思惑とはかかわりなく現実世界は存在すると考えて、現実世界を理解するために科学は発達してきた。
人は四苦八苦しながらも現実世界に適応するよう努めなくてはならない。
そして自分が死んでもこの世はつつがなく存続していく。
けれどインド思想で問題になるのは、あくまで個人にとっての世界と自分との関係だ。
とくに求道者(ヨーギやヨーギニ)においては、自分にとって世界はどのようにあるかだけが重要だった。
世界がかくかくしかじかであるのは、自分がそのように思っているからであって、
自分の死と同時に、この世は崩壊して意味を失う。
駅前の交差点に立って駅に背を向けるとき、東洋思想では背を向けた途端に駅は霧散すると考える。
新たに開きだされてきた風景と引きかえに、駅周辺の風景は畳みこまれていく。
(小難しい話と思うけれど精神世界の基礎知識だから)    2017/1
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意識は開きだされ畳み込まれて輪廻していく  12:30
翡翠五輪塔
五色玉

<世界の開きだしと畳みこみ> 
カップのコーヒーにクリームをそっと流しこむように加える。
コーヒーの熱対流にひきずられてクリームは拡散し、混じりあっていく。
これをクリームがコーヒーのなかに畳みこまれいくというふうに観察する。観想を巻き戻すなら、
クリームが混ざったコーヒーからじょじょにクリームが分離してくる様子をながめられる。
これを開きだされてくるというふうに思い描く。
エネルギーの世界から素粒子が実体化してくる、これは物質の開きだし。
素粒子が核爆発のような過程をへてエネルギーへと還元されるなら、ここでは物質の畳みこみが起きる。
同様に古代の感性では現実的な物質世界の向こう側に、神々の世界・霊的世界・神秘的世界があって、
向こう側こそ真如の世界としてきた。こちら側は向こう側から開きだされてくる。
開きだしの過程に人間の意識が関与できるなら、昨日まで無一文だった自分も大金持ちになれる、
断頭台にいくしかなかった極悪人が君主になれる。呪術は向こう側に干渉する技術として発達した。
「祈り」も「願い」もこの考え方のゆえに価値あるものとなる。
こんなふうに頭に浮かぶままにメモして、とても長い間、同じような考えに囚われていることに気付いた。
向こう側は人智をこえているがゆえにカオスで、結晶はそこから開きだされてくる。


<物質世界の開きだし> 
開きだしによって5つのパワー要素があらわれる。
インド式には地・水・火・風・空(ちすいかふうくう)がそれで、
形での象徴は四角・丸・三角・半月・ビンドウ(点)。
この形を下から上に積むと五輪塔になる。密教ではこれを如来の身体に見立てる。
精神宇宙的には宇宙は人型をしている。
人間は小宇宙だから人体にも五輪塔があって下から上へと5つのチャクラに対応する。
密教には座禅した上半身を五輪塔に見立てて、大日如来との一体化をはかる瞑想法がある。017-12


<物質世界の開きだし> 
こちら側は向こう側から開きだされてくる話のつづき。5元素は色彩で象徴されることもある。
地=黄・水=白・火=赤・風=緑・空=黒(紫)で、緑は少しややこしい。
古代には緑色を示す語彙はなくて青に含められていた。
だから「風」は木々を養うから色彩象徴は緑色だが、言葉にするときは青といった。
5色は密教寺院の旗の色など密教のシンボルカラーになった。
チャクラの色彩象徴もインド的には5色が対応する。
西欧の神智学教会関連の人たちはチャクラの色彩に虹を対応させるが、
このアイデアだと身体=小宇宙という図式が壊れてしまう。
5つのパワー要素、5元素が適宜混ざりあい、粗大化することで見て触れることのできる物質世界が
形成されていく。5元素について学ぶと形と色に敏感になれる。
注意深く世界を眺められるようになる。
周囲の世界につつしみ深く触れられるようになる。 2017/02

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今年のサマーセールは日本翡翠製品を2割引!  11:41
翡翠三日月
<サマーセール> 
サマーセールの一環として、日本翡翠の三日月ペンダントを2割引にしました。
「日本翡翠丸玉・月」のページに掲載してあります。7月末日までの割引価格です。
この製品は当社のオリジナル、新潟県糸魚川市産の日本翡翠原石(糸魚川翡翠)を使用しています。
無染色未処理の天然石製品です。
人類共通の感性として「太陽は生命を育み、月は霊性を開く」と考えられてきました。
太陽は力持ちで月は知性にすぐれている、
そんなふうなので呪術師は月からパワーを得て呪力を強化したり、
神秘的世界を歩む力を得てきました。


獣型勾玉
<サマーセール> 
既報のように、現在のホームページでセールを開催するには、
一点ごとに表示価格をセール価格に書き替えなくてはならない。
地下道を掘るセミの幼虫気分でスーパーローテクな作業をつづけて、
日本翡翠獣型勾玉と当社のオリジナル製品・日本翡翠飛龍も7月末日まで2割引きにしました。
「日本翡翠獣型勾玉・飛龍」に掲載してあります。
獣型勾玉は世界各地の神話で活躍する獣型の精霊・パワーアニマルの日本版と思います。
古墳時代の呪術師は犬・狼・狐の精霊に先導されて神秘の世界を旅したことでしょう。
獣型勾玉を手に往古のシャーマンたちを思い、自分を重ねると、
精霊たちの気配を感じられるようになります。


飛龍
<サマーセール> 
飛龍は世界最古の龍の意匠を参考に制作した当社のオリジナル作品です。
モデルとなった元の彫像は、万里の長城の北方、現在の内モンゴル自治区を中心に栄えた
紅山文化(紀元前4700−前2900年頃)という古代文明の遺跡から出土しました。
ケツ状耳飾りなどの玉作りを介して紅山文明と縄文文明はつながりがあるようです。
飛龍は障害を祓い、強運を授けてくれる龍。意識が天高く飛翔できるよう力を与えてくれます。
飛龍は通常の勾玉に比べてカット代金が3倍以上します。
加えて数年来、広東省などの経済特区での工賃が高騰しています。
低価格での提供は容易ではありません。お早目にお求めください。

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<子天狗玄太>おいら竜宮に行くんだと、玄太がいった  09:58
マツバギク
<子天狗玄太>
「なにしてるん?」突然の呼びかけにビクッとしてふりかえる。笑みをうかべた玄太がいた。
「やあ、玄太。元気にしていた?」「うん、それってフローライトだね」「詳しいね」 
ぼくは庭石にフローライトの結晶を置いてカメラを向けていた。
逆光気味になるようカメラを構えて、フローライトの半透明の色合いと、
プルンとしたみずまんじゅうのような質感を捕らえるのはなかなか難しい。
「写真を撮ってるの?」
「そうだ。ホームページに掲載してうちの店にはこういうのがありますって宣伝するんだ」
「ふーん」ゲンタは石に近寄る。「触っていい?」「もちろん」 
そのフローライトは中国の湖南省というところで採掘された。香港のジュエリーショーにでかけたついでに、
知り合いの天然石加工業者のショールームに寄って仕入れてきた。 
全体はにぎりこぶしほどの大きさ。淡い緑色して半透明な四角形の結晶がいくつも結びついて、
ビルが連なる都市模型に見えなくもない。
「ずいぶんときれいだ。太陽の光が小川の底で反射すると川の水全部がゆらゆら光る。
あんなふうだね。おいらほんとうにきれいだって思う」
「玄太は詩人だ」「そんなふうでないけど、これはほんとうにきれいだ」
「うん」とぼくはいう。「小川の光を集めて冷蔵庫にいれるとフローライトができる。
夕焼け空の上のほう、白い雲が浮かぶ青空の色合いが結晶してもフローライトができる」
「太陽の光を浴びた葉っぱを反対側から見ると、葉っぱが緑色に燃えて見える。あんなふうだね」
と玄太は言って、ふいに、「おいら竜宮に行くんだ」と言った。
「えっ?」「竜宮だよ。乙姫が里帰りしたいって、それでついていくんだ」
「乙姫?」「ああ、姫神さまの名前だ。竜宮には姉さんがいて2番目だから乙姫。
おとうは弟姫と書くといってた」
「へえーっ、竜宮ってほんとうに海の底にあるの?」
「ちょっと違う。うんと南の方にあって、人間たちには属していないから説明できない。
フダラクにも寄るんだ。時空の渦潮があって、そこを越えなくちゃならない、
ちょっした冒険になるだろう。とおとうがいってた」
「フダラク(補陀落)って観音さんの?」
「そだよ。おとうも若かったときに行ったことがあるって。ああ、フダラクはね、仙人から聞いたんだ、
それでそれを乙姫に言ったら、彼女も行きたがったんだ。
宗像三神はおばさんとかで、そこに寄って、屋久杉にも挨拶したいって」
「なんだか大冒険のようだね」「そだね。おいら旅行ってはじめてだから楽しみだ」
「どれくらい行っているの?」「1ヶ月くらいかな。おじさん時間でだよ。
なんかおみやげの石をさがしてくるね」「気をつけて行くんだよ」
餞別になるかもしれないと、辰砂のかたまりをひとつ持たせてやった。
トカゲの仙人の素振りでは、神霊界では辰砂はなにかと重宝されているらしい。
そうやって玄太は行ってしまった。玄太の父がギンコを使いに寄越すこともなくなった。 6-19-1

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■<子天狗玄太> 行者は敗退して霊力・精力・性力を失った 10:24
春の雪
<子天狗玄太> 
テレビで夜9時のNHKニュースをみていた。窓ガラスを叩く音がして、カーテンを開けると玄太がいた。
「おとうがね、行者をやっつけた!」と彼は言った。
岩船神社の鳥居をくぐり石段の下からみあげると、薄暗い街灯に照らされた境内に
3メートルはあろうと思える巨人が黒い影絵となって立っていた。
異様に大きな身の丈は天狗本来の大きさなのか、見慣れない光景に鳥肌がたった。
「おとう、おじさんを連れてきた」玄太が声をかけて石段をかけのぼった。
巨人の影は人並みに縮んで、銀狐が腰をあげた。
足下にはかけ布団を丸めたような、白っぽいかたまりが横たわっていた。
修験の行者のなりをして白装束で身をかためた行者だった。
杉の巨木の根元に背中をあずけて両足を投げ出し、うなだれた頭が胸に埋もれていた。
両手は力を失って脇にたれていた。捨てられたきぐるみのように生気がなかった。
「死んでるんですか?」挨拶もせずに父に訊いた。「気絶しているだけです」彼が応えた。
「この人は結界があるのを承知で押し入ろうとした。それで弾き飛ばされたんです。
たわめたゴムのチューブに弾かれたのと同じです。行者風情に虚仮にされるわけにはいきません。
結界に奪魂の術を加えておいたんです」
「奪魂の術?」「験力を一気に奪う術です」
「病院に運ばなくてもいいんですか?」「大丈夫でしょう。そのうち気付きます」
「女神さまは?」「玄太が人間の思念の及ばない場所にかくまっています」
天狗はかがんで行者の顎を持ち上げた。「これでこの男の人生は終わったも同じです。
きょうこのときから死ぬ日まで、だれひとり彼を必要としないし敬わない。
彼には両目をえぐられるより辛いことかもしれません」「えっ?」
「人間どうしがだましあったり、諍いあったり、殺しあうのはしかたがない。
けれど人間の分際をこえることは許されない。たとえ悪気なくそれをしたとしても、
報いは受けなくてはなりません。人間の分際で神を使役しようとしたそのことが大罪なんです」
「彼がふたたび神社を襲うということはないですか?」
「そのことなら心配に及びません。彼の人生はこれで終りです。二度と験力は使えません。
いかに修行しようと力は身に付かない。生殖能力も失われたままになるでしょう。
加持祈祷しても効力がない、占いは当たらない。セックスを餌に女信者を集めることもできない。
信者から見放されて凋落します。霊的なことには触れずに、ごく普通の人生をおくればいい。
でもこういう男にはそれができない。不平不満を並びたて自己憐憫を重ね着していくだけです」
「ええっ、そんな身も蓋もない。残りの人生はまるっきりの敗者というわけですか?」 
「そうですね。でもしかたがない。彼は残りの日々をみじめったらしく暮らすのです。
……天狗には情がないとお思いですか?」「ええ、まあ……」
「人間も天狗もだれもが少しの間、こちら側にいるだけのことです。
存在のうつろさはそこらの虫と変わらない。けれど人間は心の内に宇宙の広大さを宿している。
それを見る可能性において存在の意義が生じるんです。日々の不満や羨望を厚着しすぎたり、
絶望したりして内なる宇宙につながる通路に蓋をしたらそれで終わり。
彼の生命には一切の価値がなくなるということです。人間とは違う天狗の価値観です」
行者は小一時間もすれば気絶から覚める。との玄太の父の言葉を最後にぼくは彼らと別れた。
振り返ったときには彼らの姿はなかった。
行者とはまた会うことになるだろう、そんな気がした。4-19-3 077
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カルサイトからアメシストへ。ここにも風変わりな奴らがいる 21:21
アメシスト
<アメシスト> 
『理趣経』を読んだばかりの日々のうちに、こういうアメシストに触れると、
ついリンガヨニ風イメージを抱いてしまう。
写真の標本は、バナナほどの水晶ポイントをホットドッグの具でもあるかのように、
板状水晶が取り巻いていて、先端にアメシストの群晶が集っている。
外側の後から発達した水晶が内側の柱状結晶を抱擁しているとみるか、
締め殺しとみるかで見立ては全然変わってくる。
父系社会的で他者支配を理想化したがる人は後者のように見立てて、
母系的な抱擁のうちに喜びをわかちあうのが好みであれば前者のように見るだろう。
いずれにしろ後からの水晶が先きの水晶をこのように取り巻くのは、千万にひとつほどの可能性しかなくて、
それを想像すると、法華経の大袈裟な年代標記どうよう気が遠くなる。4-19-5


アメシスト
<アメシスト> 
これはアメシスト+カルサイトの相当不可解な結晶。ブラジルやウルグアイ産では両者が集う場合、
たいがいアメシスト・クラスターの上にカルサイトが乗っている。
アメシストが結晶した晶洞(ジオード)に後からカルサイト濃度の高い地下水がやってきたことを
表していて、リンカーン・ライムでなくてもその程度のことはわかる。
ところがこの標本ではカルサイトができた上にアメシストが析出し、反対側では、
こうやって結晶を育てるんだといわんばかりに、赤ん坊アメシストが多数へばりついている。
地殻変動などでマグマが接近して、ケイ酸濃度の高いマグマの残りものなり熱水を引き入れた
ということなんだろうか。カルサイトが溶けずにふんばったところも不可解だ。


アメシスト
<アメシスト> 
こちらの標本では、群晶を成長させることができずにウイロウみたいにアメシストと白色水晶が
混合したまま固まってしまっている。告白できずに終わった恋のようだ。
たとえば地下でカルサイトが結晶し、やがて溶けて流れさった狭い空隙目一杯、
ぎゅうぎゅうにアメシストが成長したようである。
水石(すいせき)や飾り石が流行したバブル経済の時代には、
カルサイトとフラワーアメシストは区分けされずにいた。
地下深くでの鉱物たちの様子を正しく理解するには、
大学の地質学部に通って10年間ほど勉強しなくてはならない。
そうしたらぼくは80歳とかになっていて、卒業式の翌日に他界ということになりかねない。
それって歯科医にかよって完璧に歯の修理を終えた翌日、
交通事故で死亡するのと似たようなものだという気がする。4-19-5

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続・カルサイトからマンガンへ鉱物万華鏡がグルグル回る  08:17
メリルナイト
<デンドライト> 
マンガンからデンドライトにバトンタッチして、今度はデンドライトを内包したオパールについて。
いつどこで買ったのか覚えていない。70-80mm四角で厚さ1-2mmのデンドライトが入った
白色鉱物の板状のものを5-6枚まとめて買った。あちこちのストックボックスを開いて探し出すと、
止めてあったワゴムは劣化してボロボロになっていた。購入当初はメノウかと思っていた。
それから数年経って御徒町の宝飾品店で同様のルースを見た。
それで乳白色のデンドリックオパールであることがわかり、メリルナイトという商品名を知った。
いつまでも気持ちに残る石とか、心にひっかかるものがある石には呪術的な訴求力があると思っている。
呪術的なというのは深層心理学的なと言い換えてもいい。5-19-3


アズライトボール
<カルサイト> 
炭酸塩鉱物の代表のひとつにマラカイトとアズライトがある。
カルサイトはカルシウム+炭酸。アズライトは銅+炭酸+水酸基。
料理になぞらえれば、炭酸をひいたプライパンに賽の目に切った銅を入れて、
煮立ってきたらカップ一杯の水を加えるとアズライトができる。
アズライトは長年月経つと緑色にかわってマラカイト(孔雀石)になる。
アズライトとマラカイトは同じ成分で銅鉱石として活用できる。
マラカイトはカルサイトやインカローズ同様鍾乳石状に育つものがある。
アズライトには小さなボール状に育つものがあってアズライトボールという。
半分にわると内部ではアズライトとマラカイトが混じり合っていてとても可愛い。
両者がまだら状に重なりあった鉱物がアズルマラカイトで、ここに水色のクリソコラが加わると、
水と緑の惑星のミニチュアのようになる。クリソコラも銅系の鉱物でケイ酸をベースに銅やアルミニウム、
それに水酸基が加わってできる。(写真は小振りの天然アズライトボール)


姫川白玉
<カルサイト> 
カルサイトはカルシウム+炭酸で炭酸カルシウム。カルシウムはそのままで、今度は 
|沙世鬟螢鷸世肪屬換えるとアパタイト(リン酸カルシウム)になる。
サンゴ虫など原始的な生物の外骨格はアラゴナイト(またはカルサイト)である場合が多いが、
哺乳類などの内骨格はアパタイトが主成分になる。
進化の途上で骨はアパタイトでないと都合が悪い理由があった。
炭酸がフッ素に変わるとフッ化カルシウムとなり、フローライトが登場する。
カルシウム+ケイ酸はケイ灰石(ウラストナイト)という純白の鉱物になる。
聞き慣れない鉱物名であるが、新潟・富山県のヒスイ海岸では、しばしばヒスイと間違われて採集される。
個人的には白い鉱物ファンで、ケイ灰石の霊峰のような白さに魅了されている。
(超お気に入り「姫川白玉・ひめかわはくぎょく」は成分的にはケイ灰石に近い ヒスイの本11-13
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