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青空に「く」の字の光の虫が舞う■『宮沢賢治と天然石』の表紙 23:06
「宮沢賢治と天然石」表紙
写真は新著『宮沢賢治と天然石』(青弓社刊、税込2100円)。
2、3日の間にHPに内容紹介のページを設けます。
きょう思いついたフレーズは「賢治の世界はみんなの心のうちの前世の風景」。
イーハトーブは盛岡や花巻にあるわけではなく、それぞれの人が思い描く「田舎」にある。
こんなところも、TVコマーシャルの「縁側のある風景」に似て、
賢治人気を不変たらしめている要素のひとつなんだだろう。
山の家では少し近所を歩くだけであちらやこちらでイーハトーブに出会える。


次の金曜・土曜日、9月3−4日はショップを開業します。
営業時間は午後1時から8時まで。
『宮沢賢治と天然石』を山積みにして皆さまのご来店をお待ちしています。


「きれいだなあ。おい。」という言葉にすっかりと魅了されている。

「(ああ、もう明るくなってきた。空が明るくなってきた。きれいだなあ。おい。)
深い鋼青から柔らかな桔梗、それからうるわしい天の瑠璃。それからけむりに目をつむるとな、
やはり鋼(はがね)の空が目の前一面にこめてそのなかに瑠璃色のくの字が
沢山沢山光って動いているよ。くの字が光ってうご……」
 
というように、「きれいだなあ。おい。」は[初期短編綴・柳沢]にある。
(拙著『宮沢賢治と天然石』では218ページ)。

「きれいだなあ。おい。」というと自分のなかの賢治がパッチリと目を開くような気がする。
 
この感じは若かったころに本気で額田王に惚れていた短い一時期があったのに似ている。
そこでは彼女のことを思うたびに胸がドキドキした。
切ないおもいに胸が絞られる感じがした。
彼女に会いたい、会って触れていたい、なのに彼女は遠くにいて、
あこがれるだけの存在だった。
生きていれば千数百歳という年齢なので、会えないほうが幸せだった出来事だった。
 
宮沢賢治は本を一冊書けばそれで卒業、ぼくは次のステージに行けると考えていた。
ところがどうもそうはならないらしい。

新刊の『宮沢賢治と天然石』と天然石は、
これまでの本作りに比べるなら2倍ほどの時間がかかっている。
不況ということもあるが、本作りに専念しなければ書けそうにない本でもあった。
そんなわけでひとまずショップを閉めて書いた。
紙数の制限があって、保留にした部分もたくさんある。
これからポツリポツリとそんな原稿を掘り起こしていこうかと思っている。
 
菩薩というのは悪くいえば、仏教的に人類を救済したい、
困っている人たちの霊性を引き上げたい、その願いいちずなあまりに、
死んでも死にきれない霊をいう。

なかには千手千眼、つまりは500体に分霊(わけみたま)して日夜を問わず、
人類の幸福を願う慈悲の権化のような菩薩もいる。
 
賢治は菩薩行の人といわれている。ひょっとしたら彼も菩薩の一団に加わったのかもしれない。
そうではないと断言できないのが、向こう側の世界のわけのわからないところだ。 
賢治は世界ぜんたいの幸せを願ってやまなかった。
そうした姿勢をもっともっと知ってもらいたいと賢治が思っているのなら、
その役目はぼくではないと断っておきたい。
 
賢治が終わったら稼業の日本翡翠に戻らなければならないし、
個人的趣味ではいよいよ「老子と変性意識」もおもしろそうと思っている。

「きれいだなあ。おい。」に再度戻る。
「瑠璃色のくの字が沢山沢山光って動いているよ」というのは、
ぼくが光りの虫と呼んでいる奴らのことらしい。
青空を眺めると空気のなかに「く」の字っぽくて、
くるくる動く光の虫がたくさんあらわれる。
青空を眺めてから目をつむると瞼の裏側にも現われる。
若かったころに聞いた話によると、
こういう光の虫を眺められることをシャーマンの入門試験の第一歩だとした
土地柄もあるという。
| 宮沢賢治と鉱物(天然石)変性意識 | comments(2) | trackbacks(0) | posted by YK
Comment








西荻窪の本屋さんで購入しました!
とても面白く、内容にひきつけられて、ぐんぐん読み進んでいます。
今思えば、お店(ストーンズ・バザール)で購入すればよかったです・・・
posted by mame | 2010/08/31 4:03 PM |
ありがとうございます。
どこの書店ででも買っていただけると嬉しい。
書店の救済(!)にもなることであるし。
さきほどうちの近くの書店に行ったら、
『賢治と天然石』は文芸書のいい場所に平積みしてありました。
本はけっこういい面構えをしていました。
全部サインしてこようかと思ったけれど、
もちろんそういうことはしない。
根がデクノボウ志願のようです。
posted by YK | 2010/08/31 5:09 PM |
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