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そうやって天狗の子と知りあいになった 10:11
夜光杯
<子天狗の話> 
庭の日だまりにだしたデイレクターチェアに座って朝食をとっていた。
スーパーの総菜売り場にあったフライドポテトとソーセージの詰め合わせ、それに菓子パン。
一陣の風がふいて身をすくめた。目をあげると庭の入り口に少年が立っていた。
うちの庭は門がない、通りから車ではいってこれる。
小学4、5年なんだろう。坊主頭で腕白小僧のようで小さいのに威張っていた。
デニムの半ズボンに紺色のTシャツ、胸には天狗の顔が白抜きで印刷されていた。
高尾山土産のTシャツだった。背中に赤いランドセルを背負っていた。
手招きすると走ってやってきた。「食うか?」ぼくが訊くと、
「うん」と彼はうなずいてポテトに手を伸ばした。
「学校は?」ぼくが訊くと、「人間の学校には行っていない」と彼はいった。
そうやって天狗の子、玄太と知りあいになった。
(写真は天狗が好きな夜光杯、直径4cmほど。)2017-1


★4/17<子天狗の話> 
「おじさんはなにやっているんだ?」少年が言った。「何って?仕事のことか?」「うん」
「水晶とかヒスイとか、そういう石を売ってる。原石やアクセサリーなんかだ」
「ふーん、メノウもあるのか」「ああ」
「おとうもメノウを持ってる。こんくらいで」と彼は拳を握る。
「夜になると光るんだ。満月にはこんくらいの虹が立つ」彼は親指と人差し指を広げて見せた。
「虹が立つって?」「うん、メノウの上に虹がでるんだ。おとうは石が好きでね。
おいらが持てないほど大きな水晶もある」「ヘェー凄いね。で、どこに住んでいるんだい?」
「山の奥のほうだ」「陣馬山のほうか?」「うん、もっと手前だけどもっと奥の方」
「で、おとうはどういう仕事をしているんだ?」
「天狗だよ。おいらのおとうは天狗なんだ」「あっ」と言って彼は顔色を変えた。
「ヤベェ、言っちゃいけなかったんだ」
「うぬ、聞かなかったことにする。で、そういう鼻をしているのか?」ぼくは彼にTシャツを指差す。
「まさか」と彼はいう。「鼻が長いのは人間たちの幻想なんだって。
人間たちは自分が見たいようにしか世の中を見ないって、いつもおとうは言っている」
それからふいに彼は帰ると言った。また来ると言って庭の出入り口のほうに5、6歩走って消えた。


<子天狗> 
山の家へいくバスは1時間に1本、20分ばかり経つと乗客はぼくひとりになる場合が多い。
左右を低い山並みがふさぎ、入り組んだ谷間にそった田舎道をバスは停留所に止まることなく走っていく。
その日は普段は客が乗ってくることのないバス停に止まった。
開いたドアを見ると子天狗の玄太がいた。彼はぼくに手を振り、ぼくの後の席に座った。
身体をねじって「元気だった?」と訊いた。
玄太はこぶしをだして開いた。500円硬貨をひとまわり大きくしたほどの石のドーナツがあった。
「これあげる」と彼はいった。受けとるとメノウの璧だった。
中心をすこしずらした感じで年輪模様が全体をおおっていた。
メノウは樹木の年輪に酷似した同心円状の模様を描くことがある。
乾期と雨期とで成長する速度が異なるということがあるんだろう。
「こんなにきれいなのはもらえないよ」ぼくは言った。
「いいんだ、おとうがいいって言ったんだから」玄太が言った。
「そう、じゃあ今度はおれがとびっきりのを捜しておくよ」。
彼はバス停を二つ過ぎたところで降りていった。大変だ、天狗について勉強しなくちゃと思った。
| 過ぎてゆく日々のこと | comments(0) | trackbacks(0) | posted by YK
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