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ヒューッと風がふいて天狗の子がやってくる  11:26
神社
<子天狗の話> 
天狗の子にコンシャアゲートをあげることにした。メノウの璧 (へき、ドーナツ)のお返しだ。
これもまた年輪模様のメノウであるし、雷さんのヘソのような形状がおもしろおかしい。
「こういうの見たことある」「なにこれ?」「コンシャゲートというんだ。
貝殻みたいなメノウという意味だよ」「このキラキラしたのは?」 
「こまかい水晶のつぶつぶだ。煎餅にかけたザラメ砂糖のようだね。ドゥルージークォーツってよんでる」
「おじさん詳しいね」「商売だからね」
少年のこぶしをひとまわり小さくした大きさ。黄土色とくすんだ茶色でゆがんだ年輪が描かれている。
彼はそれをひっくりかえして裏側をみる。「おう、なに、このぐにゃぐにゃした模様?」
「怪獣のヘソみたいだろ」「怪獣ってヘソはないよ」
「そうか、爬虫類なんだな。よかったらあげるよ、ドーナツのお返しだ」
「やったね」少年はランドセルのふたを開けてしまいこむ。そうやって席をたつ。


<子天狗の話>  
子天狗玄太との出会いが記憶にない。親戚の子供であるかのようにして彼はやってきた。
いろいろ考えて思い当たる節をさがした。
「この奥に神社があるだろ。参拝したときおれを見ていたの玄太だったのか?」
誰かに見られている気がして背中がくつろがないことがあった。
「そうだよ。ムササビを見にいったらオジサンがいた。境内のまんなかに立って神社を見ていた。
ずーっと立っていたのでどこが具合が悪いのかと思った。でも身体は光っていて元気そうだった」
「人が病気かそうじゃないか見ればわかるの?」「病気の人は光が小さい」
「ふーん、不思議だね、それにあの神社にムアサビがいるの?」
「ムササビがどうやって昼の間過ごしているのか見てこい、という宿題があったんだ。
おとうに話したら、その大人を知っているといって、その人のところへなら遊びにいってもいいって」
「おれのことか?」「人間のことを知るには人間と付き合うのが一番いいって」「へえ」
「ああ、おとうがね、子供に見えるからといって、必ずしもおいらが子供であるわけではないと、
いっておくようにいってた」


<子天狗の話> 
雲の影が新緑の山肌をはっていく。ヒューッと風がふいて山道の反対側の竹林がざわめく。
林業が利益を生まなくなったので山林の地主は林の手入れをしない。
竹がはえるようになったらもうおわりだ。
もういちど前回より強めの風がふいた。やっぱりと思う。
ランドセルを背負ったゲンタが橋の中程を走ってくる。
この橋には月見橋というしゃれた名前がついている。
「寺子屋でなにを勉強してきたの?」「きょうか?」「うん」「忍び寄り」「えっ」
「忍び寄りって相手に近付く術なんだ。向き合うんじゃくて近付くんだよ。そうお師匠がいった」
「お師匠?」「じいさん天狗のことだ。お師匠といわないとしかられる」「ふーん」
「自分を小さくして相手にちかづく。そうすると相手のことがわかる。
みんながいっしょに生きているんだよ。自分はタヌキだったり蛇や虫たったり、杉の木だったりする。
そういうことがわかるようになる術だ」「なんだかすごいね」
「息を小さく小さくして相手にちかづく」「うん」
「子天狗たちよこれが天狗の極意だ」少年はお師匠の真似をして右手で天狗の鼻を演じてみせた。
| 過ぎてゆく日々のこと | comments(0) | trackbacks(0) | posted by YK
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