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<子天狗玄太> 玄太が行者と戦って敗れる  08:43
梅の花
<子天狗玄太> 
姫神のもとを辞した後も、玄太は神社から立ち去りがたくて、
境内の杉の老木の枝に座って拝殿につづく本殿をみていた。
父親が引いた結界が青白く光る縄となって神社を囲んでいた。
杉の枯れ枝がバサッと音をたてて落ちる。別のどこかで樹木の幹がきしむ、
そういう音が重なり積もって夜が更けていった。
そうやって玄太は行者装束の男が拝殿の前に立ったのを見た。
男は声だかに経文をとなえた。右と左に身体をむけて印を結び真言を口にした。
玄太は結界に触れないよう上空から姫神を訪ねた。
けれどこの侵入者は結界を破り、拝殿の扉を開けて中に入っていった。
侵入者は案の定、要注意人物の行者だった。行者は自宅道場に護摩壇を築き姫神の召喚を企てていた。
姫神を呪文で縛るなら意のままに操れる。なのに行を深めても途中でなにものかに遮られてしまう。
姫神の姿を捕捉し得たと思っても、束の間のことで姿がゆらいで御簾のおくに隠れてしまう。
行者はごうをにやして、こうなれば神社に押し入ってご神体を奪うより仕方がないと思いいたったのだった。


<子天狗玄太> 
玄太は侵入者が誰であるかを知らなかった。
それでも拝殿と本殿を結ぶ廊下で行者を背後から突き飛ばした。
行者はよろめき、ふりかえった。その腹を思いきり殴った。
けれども大人に対する子供の腕力では、倒せはしなかった。
「何者ぞ?」行者が問う。玄太は答えず、頭から行者にかかっていった。
行者は玄太の頭をかかえて投げ飛ばし、とっさの判断だったのだろう、塗香を振りまいた。
丁字と樟脳の混ざったにおいに玄太がむせた。
「これはこれは、なぜ子天狗がここにいる? あの結界はおまえが敷いたのか? そうではあるまい」
行者がどなった。「そうか、あの結界は天狗のせいか、不動の縁者のおれを不動の術で縛れると思ったのか、
ええい、焼き殺してくれる」行者は不動火炎の術で玄太を焼こうとした、
玄太は被甲護身の印を組んで自分を氷柱に変えた。けれど玄太の幻術の腕は未熟だったし、
喧嘩のやり方もしらなかった。せめてあと5年歳をとっていたなら、
修験の行者に負けることはなかったが、いかんともともしがたかった。
玄太は腹を蹴られ、倒れたところをさらに蹴られ、首をつかまれ頭を殴られた。
はがいじめにされたあげく首をしめられた。玄太は無我夢中で行者の腕にかみついた。
皮膚が破れ血が吹き出し、錆びた鉄の味が口の中にひろがった。
そうやってからくも行者から逃れた玄太は本殿にかけよりご神体の水晶球を敷き布ごとつかんで逃げた。
大杉の枝にもどった玄太は、息が整うのをまって足跡を消す術をほどこして姿を消した。
ムササビが闇のなかへと飛んでいくようだった。
| 日本翡翠情報センター | comments(0) | trackbacks(0) | posted by YK
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