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<子天狗玄太> 玄太の父は呪術を破られて悄然とする  08:45
道
<子天狗玄太> 
岩船神社の拝殿のまえの自然石を雑に組んだ石段に玄太の父が座っていた。
黒いジーンズに黒っぽいシャツ姿で、背中を丸めて悄然としていた。
銀狐が呼びにきたのだった。
2階の北側の部屋でホームページ用のコメントを書いていた。銀狐が不意に姿をあらわした。
彼は後ろ足をおって座り、稲荷と同じように前足をたてて正面からぼくを見た。
だから玄太の父が呼んでいるのだとすぐにわかった。
「お呼びたてしました」と彼が言った。
「いいえ、構いませんが何事ですか?」。不吉な予感に脈拍があがった。
「結界が破られたのです。まさかそこらの行者ごときに破られるとは想像もしていませんでした」
悔悟することこのうえないといった表情だった。
ぼくは結界についておぼろな理解しかない。「それで女神さんは?」
「姫神はいません。銀狐を偵察にだしたんです。行者は彼女を誘拐していません。呪縛もしていません。
玄太といっしょに姿を消してしまったんです」
彼に先導されて拝殿の裏に回ると、本殿への渡り廊下の羽目板の一枚が地面におちて倒れていた、
もう一枚は壁から外れてかしいでいた。
そこから廊下にあがった。横幅1メートルあるかなしかの廊下は
塵こそ積もっていないもののうつろでもの寂しかった。
床板の1枚が割れて割れ口が地面に落ちていた。
本殿は入れ子になっていて、老朽化した小さな社が本殿の外観の内側に囲われていた。
社の扉はあけはなたれ、直径20センチほどの白銅鏡と榊立てが床に転がっていた。
玄太の父は通路のほぼ中央に記された黒い染みを指差した。玄太がここにいて行者と争ったあとです。
この血痕は行者のものです。天狗はたとえ切られても血痕を残さないのです。
きっと玄太は彼なりに姫神を心配して神社を見張っていたのでしょう。
けれど玄太はまだ幼い、彼の力では行者にかなわない。どうしているか心配している次第です。
彼は結界がいかなるものかを語った。今回のものは不動金縛り法の応用編だった
。呪術は呪具を使うこともあるが、大部分は施術者の想像力のもとに、印を組み、
真言をとなえることで進行する。定められた所作によって金剛杭を四隅にうち、金剛索(さく、縄)を張る。
かく張られた結界は工事現場の立ち入り禁止を示すロープの囲いのようなもので、
目には見えなくても霊的実体として存在するようになる。そしてその管理を不動明王に託す。
これを破って中に入ろうとする者は、不動明王の法力によってその場で身体が動かなくなる。
侵入者は見えない力の気配への畏怖のゆえに、その場から退かざるを得なくなる。
でもそれがいとも簡単にそこらの行者ふぜいに破られた。
「原因を解いで行者を組み伏せないことには天狗の名折れになります」彼は言った。
| 日本翡翠情報センター | comments(0) | trackbacks(0) | posted by YK
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