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<子天狗玄太> 玄太と店にいると宮沢賢治がやってきた  10:00
エレスチャル
<子天狗玄太> 
子天狗玄太は鉱物少年だった。そんなところがうちを訪ねてくるようになった理由と思う。
訪ねてくるたびにというわけではないけれど、おりにふれて話題になりそうな鉱物標本を彼にみせた。
玄太は嬉嬉として見入り、天然自然の色彩が地下の暗闇で形づくられることを不思議がるのだった。
ときには鉱物の組成について話して聞かせることもあった。玄太の色彩や形に関する感覚は鋭く、
鉱物にかんして彼は教え甲斐のある生徒だった。
定休日を選んで彼を自分の店に連れていったこともある。
店にはふたりのスタッフがいて、通常は彼女たちが店を切り盛りし、
ぼくは週に1日か2日顔を出せばすむことにしてある。接客して利潤を追及するよりも、
山の家にいて木々を眺めていたほうがはるかに性にあっている。
店は吉祥寺の駅から井の頭通りを7、8分久我山方面に歩いて1本奥まった通りにある。
閑静な商店街の雑居ビルの1階、20畳ほどの広さ。
3方の壁をアンティーク風のブックシェルやショーケース、手作りの棚で囲って、
中央に大きめのテーブルがふたつある。そこに水晶クラスターやエレスチャル、ヒマラヤ水晶、
アメシストなどの水晶類、ガーネット、トルマリン、カルサイト、などなどが
カトマンズの露店市よろしく展示してあって、ブレスレット、ネックレス、ペンダントなど、
20〜30代の男女がちょっと気張れば買えそうなアクセサリー類が
ショーケースからあふれんばかりになっている。
鉱物好きの子供たちにとって興奮度はディズニーランドに勝る。
電車のなかの玄太は緊張していた。玄太の隣には着物姿の中年女性が座り、わずかだが香水が匂った。
それが彼を落ち着かなくさせているらしかった。
「おいら電車にのるのは初めてだ、こういうのって初めてだ」彼は小声でいった。
店に着くと彼のテンションはいっきょにあがり、「おお、ガーネットがこんなにいっぱい、
このトルマリンはとてもみごとな色合いだ、それにこの水晶ったら腹をくすぐってくる、などと、
賛嘆の声がやまない。そのうちゲンタは入り口をみて眼をすがめた。
「ねえ、ねえ、おじさん、ミヤザワケンジという人が店にはいってもいいかと訊いている」と言った。
「ミヤザワケンジ? まじで?」「そだよ、ほらっ」
自動ドアの向こうに黒いウールの重そうなコートを着て、大正時代風の黒い帽子をかぶった男が立っていた。
| 日本翡翠情報センター | comments(0) | trackbacks(0) | posted by YK
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