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<子天狗玄太> 藍銅鉱を拝見したい、と宮沢賢治がいった  09:48
マグノリア
マグノリア
<子天狗玄太> 
「宮沢賢治? 亡霊なの?」ぼくが訊く、ゲンタが「うん」とうなずく。
「とにかく入ってもらおう」ぼくは電源を切ってある自動ドアを手動であけた。
「なかに入れてもらってもよろしいでしょうか?」彼は訊く。「ああ、どうぞ」ぼくはいう。
たしかに伝記の印象ほどではないが出っ歯だ。
宮沢賢治は無類の鉱物好き。彼の物語にはシロウトには見当もつかないような鉱物名がちりばめられている。
石ヤなんだから彼の詩集は読んでおかなくてはと『春と修羅』を開いた。
感銘は大きかった。結局文庫の宮沢賢治全集を全部読んだ。
「お持ちであるなら藍銅鉱を拝見したい」彼は言う。
「ランドウコウ?」ぼくは言い、「ああ、アズライトね、たくさんありますよ」
標本類がいれてある多段式のケースからアズライト、マラカイトを入れてある箱を引き出す。
両者は同じ成分、アズライトの硫化が進むと、緑色に発色してマラカイトになる。
「手にしてもよろしいですか?」「ええ、どうぞ」
鶏卵より一回り小さいアズライトを手に眼に近付けて見入る。
彼は突然に「ほっほっ、ほーっ」と叫んで、飛び上がり、空中で2回転した。
「いやいや、じ、じつに素晴らしい」彼は言った。
「霧が融けたのでした。太陽は磨きたての藍銅鉱のそらに液体のようにゆらめいてかかり、
融けのこりの霧はまぶしく蝋のように谷のあちこちに澱みます」と自作の詩をよんだ。
「<マグノリアの木>ですかね」ぼくはいう。
「ほっーほ、わたくしの作品をご存じですか」「ええ、有名です」
「そうですか、有名ですか」彼は嬉しそうに笑った。
 帰らなくてはならないのだと、彼はていねいに別れの挨拶をして、自動ドアの前に立った。
ドアは開かない。ぼくは手動でドアを開いた。彼はふかぶかとお辞儀して背中をむけた。
 4-19-3(マグノリアの花。木蓮と泰山木の違いがわからない)
| 日本翡翠情報センター | comments(0) | trackbacks(0) | posted by YK
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