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■<璧・ピーディスク> 小さな円盤が天界への通用門になる  9/15 2019 09:54
ヘキ
<ピーディスク・璧・1> 
机回りに幾つものレターケースが積んである。たくさんたくさんのプラスチックの引きだしのひとつに
石のドーナツのサンプルが集めてある。「ドーナツ」は香港あたりの天然石加工業者の用語で、
漢字では「璧(へき)」と書く。壁(かべ)ではなくて完璧の璧だ。
「璧(へき)」は中国語で「ピー(発音が難しい)」といい、英語では「ピーディスク」という。
現代の中国では「平安扣」というようだ。 
「扣(こう」は辞書を開くと「もたらす」という意味がある。
ピーディスクは気持ちが不安定なとき、表面を親指でこすると気持ちを安定させられると、
「タリズマンブック」みたいな翻訳書に出ていた。
璧は5千年ほど昔に長江下流域に栄えた良渚(りょうしょ)文明で編みだされた。
以後、周から漢の時代を経て、もっとも重要なパワーオブジェクトとみなされてきた。9-19-2


ソウ(大型)
<ピーディスク・璧・2> 
璧(へき、ピーディスク)は古代中国の良渚文明 (紀元前3500−紀元前2200頃)で最初に作られた。
良渚文明は北の紅山文明とならんで玉器発祥の地と目されている。
ここでの璧はソウ(後述)や鉞(エツ、磨製石斧)ともに3種の神器とされていたようだ。
周の時代になると「璧は天を治め、ソウは地を治める」といって、
君主が貴族の男性には璧を、女性にはソウを与えたという。
紀元前100年ほどに築造された古墳、馬王堆漢墓(湖南省長沙)からの出土品をみると、
璧は大空に開けられた通路であることがわかる。
人間が目にする大空と、神々や仙人が暮らす天界をつなぐ 「穴」が璧に象徴された。
壁からは単純な形であっても五芒星や六芒星よりもっと大きな意味を読み取れる。
良渚文明は他人の土地の歴史のようだが、ここらあたりから水田稲作の民は、
山東半島や朝鮮半島を経由して日本列島に移民してきたことを考えるなら、
長江下流域はご先祖の土地ということになる。不本意な人がいるかもしれない。 9-19-3


石斧
<ピーディスク・璧・3> 
玉器(ぎょっき)文明発祥の地、良渚では璧(ヘキ)とソウと鉞(エツ、まさかり、磨製石斧)が
三種の神器とされていた。古代社会では戦争の頭目と、政治的な酋長と、
神祭りを司る呪術師の3つ権力に別れていて、統合することで君主が登場してくる。
ここでは石斧は軍事力を、璧は天空の象徴であることから民を統御する政治力を、ソウは祭祀権を象徴した。
ソウはおおむね四角柱で中央に円柱形の穴があけてある。
四角柱外側の刻み目は階層状の天界を表すという。形状から女性象徴として扱われた。
周から漢へと時代が移り、鉄器が使用されるようになっても、
璧・ソウ・鉞の玉器はパワーを育む法器として伝承されていった。
古墳・奈良時代とヤマト王朝はあんなに熱心に中国文化を模倣したのに、
玉器は日本列島に流行しなかった。
これらは中華周辺の蛮族に渡すものではないと、中国の権力者たちが思っていたのだろう。
当時の日本人は文献にみる「玉(たま)」にあこがれながらも、
何が「玉(ぎょく)」であるかを知らなかった。9-19-3

| 過ぎてゆく日々のこと | comments(0) | trackbacks(0) | posted by YK
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